ヒメサマのい・う・と・お・り

第9話 陽だまりの庭で



「……まったく、ようやく顔を見せたと思ったらこれだ」

 呆れ混じりに言って、レアシスは紅茶のカップを傾けながら、先ほど白子の魔道師が出て行ったドアを一瞥した。それが彼が彼たる所以なのだが、いやはや、彼ほど主として扱い難い人材はいない。
 それについては、レアシスにも原因があるのかもしれない。彼につけた手綱が、かなり緩いからだ。
 まあ、きつい拘束をするような手綱なら、最初からつけてくれなかったかもしれないが。
「思えば、僕の周りの人材はいつもそうだな」
 自嘲気味に笑う。自らにつけられた鎖の痕が深いせいだろうか。どうにも他の人間につける手綱は甘くなってしまう傾向がある。
 レンはいつ自分の首に刃を刺してしまうか心配でならないし、カシスにしても協力関係にあるのは膨大な研究費と待遇の良さ、そして目の前の貴重な実験体[モルモット]があって初めて成り立つものだ。正直な話、いつ裏切られても覚悟はしている。そのとき、取り残されるのはどうせ自分なのだろう。
 最も、その方がいいのかもしれない。主が部下を無条件で信頼できていないのと同時に、彼らも自分を信頼しているとは思えない。

 所詮は細い糸でかろうじて繋がっているだけなのだ。

 軽く首を振って、レアシスは窓辺に向かう。
「駄目だな、こんなことを思っていちゃ。人材を使い捨てているように聞こえる。……父上じゃあるまいし」
 ぞくり、と背筋に悪寒が走り、全身を古傷の痛みが駆け抜けた。ぶわっと噴き出した脂汗が煩わしくて、乱暴に拭う。
 ぎりぎりと歯軋りをして、痛みの錯覚を飲み下す。先ほど薬を服用したばかりだというのに、気分が悪くなる。
 口元を覆い、縋りつくようにベランダの手すりに寄りかかる。吐き出すスパンの短い息が、動悸の速さを物語る。
 ――くッ……
 あともう少し。もう少しだけ持てばいいものを、この身体はまったく主の言うことを聞かない。どこかの誰かたちと一緒だ。いつ裏切るともしれない。心のどこかで自分はそれでもいいと思っている。
 楽になるからか? 情けないことこの上ない。
 崩れそうになる体の支えとして、手すりにもたれる。その刹那、

「――ッ!」

 眼下に、人の群れが見えた。

 美しい庭の一角にそぐわない男の群れだった。貴族風の男が筆頭に立った、一様に軽蔑の目をしている柄のあまり良くなさそうな男たちだ。少しだけ身を乗り出してみると、中心にいるのは一人の少年らしかった。
 以前、獣人族というのを見たことがあったが、同じ類だろうか。へたん、と折れた耳と、彼を取り囲む男の一人が掴んでいたのは少年の尾ていから生える長い尻尾だった。
 声はよくは聞こえなかったが、どうやら少年のその容姿を捕まえて、この祭りの参加者である一山の男たちが難癖をつけているらしい。
 三千人の参加者の中で、少年一人を潰したところでどうこうなるとは思えないのに。
「まったく……何だってこんなときに、ね」
 舌打ちをする。
 不遇としか言い様がない。いや、それともこれは罰か代償か、どちらかなのだろうか。こんなもので、汚れた手が、身体が満たされるわけではないのだろうけれど。

 手すりを掴んだまま、レアシスは重い身体をようやく持ち上げる。込み上げる吐き気を抑えて、今一度、眼下の団体を乾いた目で見下ろした。

◇ ◇ ◇

 リィンは顔を顰め、耳を伏せたまま目の前の、背の高い男たちを睨み上げていた。
 また背後の男が尻尾を掴んできた。嫌悪感にばしっ、とそれを振り払ってやると、男たちの中からわけのわからない笑い声が湧き上がる。その声には少なからず嘲りが含まれていたが、リィンにはいかんせん、言葉が通じて来ない。
 どうせ罵倒だということはわかるから、聞こえない方がいいのかもしれないけれど。

 ――そんなにこいつが珍しい、ってのか。まったく。

 リィンは男たちを視線で牽制しながら、自分の尻尾を見下ろした。確かにイドラの国はここから遠いし、イドラの中でもリィンたちの種族は少数民族だ。
 余所の国から見れば、確かに見慣れないものかもしれない。だが、だからといっていきなりわけのわからない男たちに囲まれて、意味も分からない言葉で罵倒される理由になるってのか。まったくナンセンスだ。
 自分をここに連れてきたジンとアルには、後でたっぷりと小言と文句をつけてやる。
 そう心に決めて、リィンはとりあえずこの場を抜け出す方法を模索する。エクルーでも一緒にいれば良かったのに。残念なことに、リィンには空間を移動するような能力も、男たち全員を吹っ飛ばせるだけの力もない。
 ここにルパでもいればな、もうちょっと何とかなったかもしれないんだけど、とちょっとだけ思ったが、まさか念じてあの愛くるしい生き物が出てくるわけでもなし。
 ―― ……仕方ないかな。
 リィンは溜め息を吐いて、懐から青銀の髪の少女に貰ったカードを取り出そうとする。が、
 ばしッ。
「あ……ッ」
 その手が振り払われてはらり、とカードが滑り落ちる。だが、昨日とは違って男たちはそれに反応を示そうとはしなかった。きっと男たちも、リィンのようにこの文面が読めていないのだ。
 それでもリィンにとっては大切な友達からの最高のプレゼントだった。拾おうと手を伸ばして、

 ざっ……

「あ……ッ!」

 男の一人の靴底が、白いカードを踏みつけた。リィンの頭に、さっと血が上る。大人なしくしていろ、というジンの命も頭から抜け落ちるくらいに。
 リィンの足が、男の腹に向けられる。繰り出そうとした、そのときだ。

 ばさりッ……

 男たちの群れの向こうから、衣擦れの音が聞こえた。男たちの粗暴な響きがする声が止んだ。
 見ると男たちの視線が、リィンから逸れていて、すぐ側にあった王城の裏手の方に向いている。何事かとリィンの視線も反射的にそちらを向く。
 そして、顔を顰めた。
 簡単に言えば、上から人が降って来た。普段、エクルーやアルの面妖さを目の当たりにしているから、リィンはその程度では驚かない。周りの男たちにとってはぽかん、と口を開けなければいけないようなことだったらしいが。
 リィンはさっきまでのお返しにちょっとだけ鼻を鳴らして、改めて降って来た男を見た。

 一瞬、女性とも見紛えた。歳はリィンより、二、三ほど上だろう。陽光をそのまま吸い取ってしまう絹のような黒髪を肩ほどまで伸ばし、すっ、と静謐に開いた瞳はどこまでも深い漆黒。着ている装束も黒一色で、太陽の照りつける庭園の中ではやや暑そうに見えた。
 いや、それより何より暑そうなのは、袖口から覗く腕や首筋、そして顔の半分までもを覆う包帯だった。情けのように残った顔半分だけを見れば、エクルーとタイプは違うが、勝らずとも劣らない綺麗な顔をしているのに、それが異様な風体に見えてしまっている。

「……邪魔するようで申し訳ありません。しかし、こちらとしても午後のお茶の時間に少々、目障りだったもので。
 失礼ですが、早々に退散願えませんでしょうか?」

「何だ、お前は」

 言葉は通じて来ないが、その黒衣の少年がすらすらと吐き出した言葉の方が、周りの男たちよりも上品な言葉なのだろうことだけは分かる。
 貴族風の男が吐き出すように少年に声を叩きつけたのを見ると、おそらく少年が言ったのは仲裁の言葉だったのだろう。

「さあ? それはどうでもいいことでしょう」

「良くはない。何の権利があってそんな口が聞けるんだ、お前みたいな可笑しなヤツが」

 男の口調に嘲りが含まれる。リィンの尻尾と耳を罵倒したように、少年の風体を馬鹿にしているのだろうか。もう呆れて言葉も出ない。
 少しだけ居た堪れなくなって少年を見る。彼は静かにすっ、と黒曜石のような目を細ませた。

「……どこの公爵様かは存じませんが、人種差別は見ていて見苦しいですよ。それとも、紳士なのは格好だけですか?」

「何だと!?」

 男の荒々しい声が張り上げられる。周りの腕っ節の強そうな男たちが、臨戦態勢、とばかりに腰を低くした。

 ――ちょっとまずい、よな……。

 明らかに細身の少年を見て、リィンはいきなり不安になった。この、ともすれば儚げな印象の少年が、粗忽で荒事が好きそうなこの男たちに敵うのだろうか。
 自分のために怪我などされたら、いくら何でも寝覚めが悪すぎる。

「お前……いい度胸じゃないか……、名前を言ってみろ!」

「生憎ですが、真っ当な人間の話に耳を傾けない獣に聞かせるような名前は持ち合わせておりませんので。いえ、実に残念です」
 少年は言葉を終わらせて、にっこりと、半分だけの顔に見惚れるような笑顔を浮かべた。男の額にびきびきと血管が浮きあがる。

 ――まずい……ッ!

『ち、ちょっと待て、あんた……』

「やっちまえ!」
 男の号令が下った。リィンの周りに壁のように聳えていた男たちが一気に駆け出す。リィンの背中に冷や汗が滴った。
 先頭を駆けてくる男を、ぼんやりとした目で少年は仰ぎ見た。迫ってくる拳を、ああ、当たったら痛そうだな、くらいにしか感じていない目だった。
「……まあ、でも痛いのは嫌だな……」
 ぽつり、と少年は呟いて、

 どすッ!!

「ッ!?」
 次の瞬間に起こったことを、少年を覗いてその場にいた全員が理解し得なかった。
 最初にかかった男の身体が反転して、どうなったのか背中が地面に叩きつけられていた。地面に転がった男は達磨のようにころころと転げ周り、拳を作っていた右腕を押さえながらあひゃあひゃ変な悲鳴を上げている。
「ああ、少し加減を間違えた」
 少年は少しばかり罰が悪そうな顔で肩を竦めていた。少年に爪先を向けていた男たちが、じりっと、たじろいで二の足を踏む。
 男たちに、少年の動きの一切が見えていなかった。どうやってあの細腕が、同士を薙ぎ倒せたのか、見当もつけられないのだ。
「くッ……馬鹿共ッ! そんなことで怯むんじゃない! かかれ!」
 貴族風の男の空威張りに、従う男はいなかった。お互いに視線を彷徨わせて、あるいは先に行け、と突っかかりあって、まったく要領を得ない。
「こ、この豚ども……ッ! えぇい、お前! ふざけるな、何の真似を……ッ!」
「……だから。いい加減にして置きなさい、と言っているんですよ……」
「…ッ!」
 ぞくり、とリィンの背中にさえ寒気が走った。ふと顔を上げた彼の表情が、先ほどの笑顔と一変している。
 深い漆黒の瞳が薄く開かれて、睨んでいるわけでもないのに、まるでその永遠の黒の奈落に引きずり込まれそうな錯覚さえ抱く、奇妙な威圧が放たれている。ぞわぞわとした感覚が、足の先からリィンを襲った。
 起こしては行けない獰猛な獣の尾を踏んでしまったときのような、そんな感覚に襲われる。
 貴族風の男が、怖気づいて二歩下がる。額には冷や汗がびっしりと浮いていた。身を苛む錯覚は、永遠の凍りか、それとも骨まで焼き尽くす業火なのか。
 すっ、と細めた目で、男たちを見下しながら、少年はゆっくりと唇を開く。

「己より弱い者しか叩けぬ愚か者が……我に相手立つなど浅ましい。身の程を知れッ!!」
 歳若い少年から発せられたとも思えぬ厳かな声が、男たちの耳を振るわせる。びりびりと、まるでその場に落雷でもあったかのように、威圧と緊張が男たちを凍りつかせていた。
 最初に背を向けたのは誰だったか。その威圧に負けて、男たちが独りでに散開し始める。貴族風の男も、最初は逃げていく男たちを罵倒していたが、結局はかくかくと膝を笑わせながらおたおたと逃げていった。
 リィンは茫然として一連の動きを眺めていた。
 その彼の背後に、こつり、と靴音が響く。
「……大丈夫?」

『あー、うー……えっと』
 振り返ると、今先ほど啖呵を切った春の雷のような面をすっかり潜めた少年が、柔らかい笑みを浮かべて手を差し伸べてきていた。
 その手を断って立ち上がると、リィンは困った表情で首を傾げる。
 気遣う口調なのは分かる。たぶん、『大丈夫か?』とか、そんな言葉を喋っているのだろうが、いかんせん、言語が分からない。いくら直感に優れていると言っても、会話のすべてを感で補えるわけはない。
 数瞬して、少年も何かがおかしいことに気がついたらしい。眉根を寄せて、唇に指を押し当て、空を見る。
 しばらく何かを思い出すように目を閉じて、改めてリィンへ向き直ると、
『あー、あー、おはようございます、ありがとう、大丈夫……こんなものかな? 分かる?』
『!』
 やや訛ってはいるものの、すらりとイドラの言葉を紡ぎ出した少年に、リィンは目を丸くした。通じているらしいことが分かると、少年はほっとした表情で今一度、『大丈夫?』と聞いてくる。

『イドラの国か。君は随分と遠いところから来ているんだね』
『あ、ああ、そう、だ……。にしても、よく分かったな』
『一応ね。イントネーションは自信がないのだけど。僕の家には結構、口うるさい家庭教師がいるんだよ』
 先ほどから度肝を抜かれっ放しだった。何者かは分からないが、エクルー並の超人であるらしい。
『助かったよ、ありがとう』
『いいえ。こちらとしても、あんなものを見ながらお茶の時間、というのは御免被るから。お気になさらず』

 少年は言って、足元から転がっていたカードを拾い上げ、付いていた土をぱんぱんと軽く払う。

『あ、それは……』

 すっ、と目を細めて少年はカードに目を通す。気まずい沈黙の中で、少年は一度ふ、と笑うとリィンの前にカードを差し出した。土は綺麗に払われていた。

『あ……』
『僕にはよく分からないけれど。大切なものなんだろう?』
『あ……ああ。ありがとう』

 少年は謙虚に首を振る。アルやジンにも見習わせてやりたい。まったく、人をこんなところに引っ張って来ておいてこれなのだ。

 ききぃっ。

『あ』
「?」

 側の花壇の裏側から、小さな声がした。ひょこん、と顔を覗かせたのは、長い尻尾をおったてた、可愛らしい茶色の小動物だ。
『ああ、放っておいて悪かったよ。ほら、こっちへおいで』
 きぃっ。
 リィンが呼びかけてやると、その小さなリスはたたたっと駆けてきてリィンの肩に登る。
『可愛いね。君のペット?』
『いや、この庭園で見つけて仲良くなった』
 少年はわずかに驚いてひゅ、と短く口笛を吹いた。
『あはは、君は獣使い[ビーストマスター]か何かかい? 野生動物と仲良くなれるなんてすごいね』
『俺の住んでる集落は動物や植物、まあ、自然を重んじて暮らしてるんだよ。何より俺は奴らが好きだから。
 これくらいは当たり前のことさ』
『いいね。いいところだ。長生きするよ、そういう集落は』

 顔にかかった髪を掻き揚げて、くすくすと屈託なく笑いながら言う。からかいでもおだてでもない、自然な言葉だった。
 リィンの警戒が少しだけ解けていく。本当に何者なのだろう、推し量ろうとしていると、きぃ!と肩のリスが小さく鋭く鳴いた。

『……? あんた、どこか……気分でも悪いのか?』
「?」

 少年の目がわずかに見開かれる。秀麗な顔に、いきなり人間味が増したようで少し可笑しかった。

『何故?』
『いや、こいつがあんたを気遣っているからさ。具合が悪そうだ、って』
『……驚いた。君は動物の言葉までわかるの?』
『言葉はわからない。知り合いの双子ならわかるかもしれないけど。
 けど長く動物と付き合ってるとさ、何となく、言いたいことが分かってくるもんなんだ』

リィンは少しだけ考える。そして、すっと右手を差し出した。

『?』

『俺の知り合いは気分が悪いとき、俺に触れてもらうと、良くなるっていうんだ。まあ、フィーリングみたいなものかもしれないから、あんたには効かないかもしれないけどな。気休めだよ』

『……』

 少年はしばらく沈黙した後、ふっ、と小さく笑みを浮かべて同じように右手を差し出した。軽く握手を交わす。

 少年の形の良い眉が少しだけ驚きに上がった。そうして、大きく肩を上下させる。ゆっくりと自分から手を離すと、微笑みを浮かべながら顔を上げた。

『……ありがとう。少しだけ本当に気分が良くなった。
 君は僕の知らない魔法をいっぱい知ってるね。羨ましいよ』

『そんなことはないさ。俺はあんたの方が羨ましい。
 あんたみたいに強かったら、きっと好きな奴だってしっかり守ってやれるんだろうに、さ』

 ぽろりと溢してしまった一言に、少年はやや曖昧な笑みを浮かべた。一瞬だけ、左胸を抑えるような動作をしてから、何故だか自嘲的に感じる表情でリィンを見た。

『……そうかな。それは、どうだろうね……』
『?』
『君は君の出来ることを大事にした方が良い。今のは素晴らしい能力だよ。身に過ぎた力は君の好きだという人を傷つけるだけだと思うけれど、ね』
『……俺はどう頑張っても弱いまま、ってことかよ』
『あはは、そうは言ってないさ。むしろ、自分を過小評価しなくていい、と言ったつもりだよ。捻くれた言い方になってすまなかったね。
 じゃあ、僕はこれで。昼間の太陽はちょっと苦手なんだ』
『あ、ちょっと待ってくれ』
 踵を返して立ち去ろうとした少年を呼び止める。少年は小首を傾げて振り返った。
『俺はリィン、って言うんだ。あんたは?』
「……」
 少年はしばらく沈黙した。迷うような素振りを見せて、リィンにはわからない言葉でぼそりと、
「……本当はあんまり名前を口にするのは好きじゃないんだけど。先に名乗られたら仕方ないか……」

『?』
『レアシス。それじゃあ、また縁があったら』
 わずかに訛ったイドラの言語でそれだけを言い放つと、来たときと同じように黒衣を衣擦れに鳴らして少年は去っていった。
 リィンは子リスと共にしばらくその背中を眺めていたが、
「おい、リィン!」
 やや顔色を青ざめさせたエクルーが庭園の向こうからかける声に、我に返った。あのエクルーが焦っている、ということは、またアルに何かあったのだろうか。
 リィンは子リスを地面に下ろすと、そちらの方へと駆け出した。
 まだ手に持っていたカードを懐へしまう。

 ――そういえば……

 ちらりとカードに目を走らせながら、ふと首を傾げる。あの少年、遠いイドラの言葉は学んでいたようだが、カルミノの文字は読めなかったのだろうか……?
 一瞬だけ背後を振り返る。だが、あの黒衣の少年の姿はもう見えなくなった後だった。




 
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